体験は更新されなくても思い出は色褪せない
8月13日 晴れ
いつもの居間のエアコンが壊れてまるで熱帯にいるかのように暑い。お盆だし修理は来てもらえないしで仕方なく、唯一エアコンが壊れていない狭い家の狭い部屋にカイヌシ二人とお犬様2頭身を寄せ合って?いた。
酷暑のせいもあってか老犬はもう体に力が入らないようで「たれぱんだ」や「ぐでたま」に負けないくらいだらんとしていた。翌日は夜からの仕事だったので早朝に皆で近所のいつもの公園に散歩に行く約束をしてその日は就寝した。
8月14日 晴れ。
朝6時に起きて約束通り?みんなで散歩。老犬はもう自ら歩くこともできないのでカートに乗せて大きな公園の外周をぐるっと回る。もう何千回と来ているいつもの散歩コース。1周だけして暑さが本格的になる前に帰宅。
家に帰って老犬はご飯を食べさせてもらってうとうとしている。カイヌシもこれから睡眠をとる前に朝マックでも行ってこようと思ったけど老犬の様子がおかしい。
呼吸が浅くて早い。そしてメタルスライムのようにとろけている。とりあえずエアコンのある狭い部屋に移動して様子をうかがっていた。
15分?20分???どれくらい時間が経ったのかあまりわからなかったけど家族みんなのいるところ、ヨメノヒトの腕の中で老犬は息を引き取った。
15歳と11か月。今年の7月になってから急激に体調がわるくなってただけに少し覚悟はしていたけどそれは唐突であっけなかった。敷物を交換する為に動かなくなった老犬を抱いてみたけど少し軽くなっているような気がした。魂の重さは21グラムって映画があったけど本当に魂には重さがあったんだねって思った。
ネットで火葬場を探していろんな事を準備して…としている間にタイムリミット。仕事にいかないといけなくなってしまって家を出た。ああ、お通夜に家をでるとは…。
26:00くらいに帰ってきて老犬の亡骸をみるとすこし涙がでてきたけどとりあえず寝る事に。
8月15日 雨のち曇り。
今日はお昼から老犬のお葬式。市内の外れにある火葬場にいく。最後のお別れをして火葬されて骨だけになった老犬をみるとほんとうにいなくなっちゃったんだと実感してまた悲しくなった。
9月22日 雨のち晴れ。
動物愛護感謝デー。あまりこういう押しつけがましいイベントは好みではないえど老犬が表彰されるとあれば別。僕の住んでいるところは15歳を超えるとご長寿犬として表彰される。15歳と11か月。本当はこの表彰式も一緒に参加する気満々だったのい叶わなかった。でもご長寿だった事になんの陰りがあるわけではないので堂々と表彰状を受け取った。今年の夏の酷暑を少し思い出させるような暑さの中、大型ビジョン(という名の液晶テレビ)に映った老犬の姿を写真に納めて帰宅。頑張りが認められたような気がして晴れがましさと嬉しさの混じったへんな気持ちだった。
10月1日 晴れ。
台風一過の晴れ模様。今日は四十九日。
もう体験は更新される事もなくなちゃったけど思い出はいつまでも色褪せないよね。
3歳で椎間板ヘルニアになって下半身麻痺。回復する見込みがないという事を告げられた時の受け入れがたい事実。人間なら絶望したり落ち込んだり悲しんだり受け入れるまで相当に時間が必要なのは容易に想像はできるけどお犬様はちがった。
「下半身動きませんけどなにか?」みたいな感じですこしも気にする様子もなくそのポジティブさに救われた。健常な犬よりいろんなことろに行ってみようとか体験してみようとかカイヌシが躍起になっていたのもきっと自分の後悔と自責の念からだったとおもう。北海道や熊本に一緒にいけたのは最高の思い出です。
いままでありがとう。
ラテさん